理学部の癖に理学部の癖に……。少年は歯を軋ませた。

 ゼミの飲みがね、体育会系なんですよ。理学部の癖に。
 今年度のゼミの初日ということで、新四年生歓迎の飲み会だったわけですが(うちの大学の理学部では四年生から研究室に配属される)、その中に二留の方が二人。しかも内一人は当年とって29歳。
「いや、敬語使わないでよ! 後輩なんだから!」
 とか言われてもまあ無理です。
 んで、その後輩(本当は先輩)の二人が実にアッパー系なのです。休み時間に校舎前でサッカーやってたり、趣味がサーフィンだったりするほどの典型的アッパーなのです。理学部の癖に。加えて教授が大の宴会好きだったりするものですから、飲み会はさながらアッパー達の集うアッパー・アイランドに。僕と他数名程度ダウナーが混じってるくらいではどうしようもありません。端っこでボソボソとハンターハンターの今後について語ろうとしても輪の中に引き戻されてしまいます。うわあ居酒屋の店員の姉ちゃんに絡んでるよ。しんどい。
 段々酒が回ってきたらしく、いつしか教授は説教モードに。二留してる二人の後輩(本当は先輩)は実はまだ単位が足りず、本当は三留するはずのところをうちの教授が拾ってあげたらしく、標的になってます。
「いいか、俺はお前らが卒業しようが中退しようがどうでも良いんだ。どうでも良い。だが、お前らに本気で卒業しようって気があるんなら、そのために全力を出す気があるんなら、いくらでも手を貸してやる、そう言ってるんだ。本気でやれよ。ああ? やる気はあんのか?」
 そんな誰よりも本人が判ってそうなこと言ってもなあ……なんて思いつつ眺めていたらどうもお二人さん、半ば本気で感動し始めてるっぽいぞ? なんかカイジの序盤でこんなシーンあったような……ああ、利根川先生の説教か。しんどい。
 帰り際、「こういう飲み、月イチくらいでやりたいよねー」と訊いてくる後輩(本当は先輩)に対して笑顔で頷きを返しつつ、お別れ。まあやったとして、僕は出ませんけども。