逃げない奴は訓練された偶像崇拝者だ

火蛾 (講談社ノベルス)

火蛾 (講談社ノベルス)

 古泉迦十『火蛾』読了。
 第十七回メフィスト賞受賞作。十二世紀の中東を舞台にした本格(と呼んで良いでしょう)ミステリ。京極夏彦鉄鼠の檻』がよく引き合いに出されるのですが、なるほど、『鉄鼠』における禅をイスラームに置き換えたもの、というと伝わりやすいですね。WhoよりもWhyに重きが置かれているところなんかも近い……てすごいネタバレに踏み込みそうな気がしてきた。ここらでやめ。
 現実と幻想のシームレスな感じ――いや、そもそも現実と幻想が混淆してる感じ、な雰囲気を味わえれば良いのかな、と思いました。各所で絶賛されているんですが、それほどには楽しめず。文章が淡白すぎるかな。この無駄を削ぎ落とした、求道者のような文体が作品の雰囲気に合ってるとは思うんですが、もうちょっとケレン味とか思わせぶりな言動とか、そういったものが欲しい。と思うのは僕が素人だからでしょうか。
 
 評価:【B】