『エナたま』ネタバレかどうかギリギリの線を狙う感想。
エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室 (講談社ノベルス)
- 作者: 佐藤友哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/12/06
- メディア: 新書
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『フリッカー式』(感想→id:rindoh-r:20050830)に続く第二作である。とりあえず物語の最序盤から、
「私は他人の『肉』を…『喰う』! ことでッ!! そいつの『記憶』を『抽出』しッ! 『再生』することができる…!」
――などというビノールトさん(HUNTER×HUNTER)みたいな女子高生が登場する攻めの展開。念系統は特質系ですね。能力名は『肉の恩恵(メメント・モリ)』が宜しいかと思います。
このカニバリズム女子高生を始め、コスプレで心の平安を得る女子高生、ドッペルゲンガーに怯え逃げ惑う女子高生、クラス中から虐められる女子高生、転校初日から圧倒的カリスマで教室を牛耳る女子高生、予知能力を持つ女子高生……って女子高生ばっかけども、いや男子高生も出てくるけども、ともかく、そんな連中がそれぞれの思惑で動く群像劇。視点は彼らの間でころころ動き、各々の物語を並行して語っていく。
こういう構成は多少疲れるものだけど(特に人喰い女子高生視点とコスプレ女子高生視点の区別が辛かった。キャラかぶってるんだもの)、魅力的な謎が提示され、ばらばらだったエピソードが交錯し始めるにつき、どんどん面白くなってくる。謎は相当不可解だ。一体どうやって決着をつけるつもりなのか……。否が応にも高まる期待。
終盤、何者かに導かれるようにして、主要登場人物たちはひとところに集結する。ついに解決編が始まるのだ。気分は高揚し、ページを捲る手は自然と早くなり――ついに真相は明かされた!
…………唖然。
僕がユヤタンをなめていた、と言うべきか。それともユヤタンが全人類をなめていた、と言うべきか。もうね、馬鹿かと。阿呆かと。
あー。
ありのまま、ラスト近くで起こったことを話すぜー。
『冒頭で提示されて以来ずっと魅力的な謎として物語を牽引してきた不可解な事象が突如現れた新手のスタンド使いの能力ということで説明された』
誤解しないでほしいのだが、超能力が出てくるのは別に構わない。超能力がある世界には超能力がある世界なりの論理があるはずで、前提条件さえきちんと示されていればその世界でもミステリは立派に成り立つはずで云々。しかしこれは……。証拠の後出しどころの騒ぎじゃねえ。
とにかく言えることは、これから先、たとえ突然出てきた通り抜けフープで密室が解決されたとしても、それがユヤタン作品である限り、我々は怒ることができない、ということだ。
え、知ってたって? ユヤタン作品はそういうものなの? マジ? ああ、そうかそうか。そうなんだ。知らなかったのは僕だけか。そうか……。
この本が借りものでなかったら破ってる。絶対破る。絶対だ。
評価:【C+】
(中途半端な評価だけど、途中までは、途中までは確かに面白かったんだ。僕はその事実を、忘れたくない)