いとうせいこう『ノーライフキング』読了。

ノーライフキング (新潮文庫)

ノーライフキング (新潮文庫)

 キーワード:1987年、小学四年生、ファミコン(作中では『ディス・コン』)、デマ。
 デマの何が怖いって、デマは倒すことができないのです。デマと戦うということは、デマの実在を認めることなしにはできません。デマと戦おうとする意志がまた、デマの存在に根拠を加えることになる。
 作中の小学生たちはノーライフキングを倒そうとして、結果、ノーライフキングに命を与えているわけです。なんとなく、白面の者を思い出しますね。白面を憎む心が白面を生み出しているのだ。
 しかしどうにも、ほんとうのリアルが云々、という話は苦手です。「今の子どもはリアルを知らない」的な言説には、はあそうですか、としか答えられませんが、「子どもたちは新しいリアルと戦っている」なんて言い出すのもそれと大して変わらないのではないか。ゲームもネットも、所詮は現実のものですよ。
 
 評価:【B】