古橋秀之『ある日、爆弾がおちてきて』読了。

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

 こんな萌え萌えしい表紙の本を買ったのは久しぶり。図書館にラノベは置いてないからな、買わざるを得ないのです。仕方なし。
 さて古橋秀之といえば『ブラックロッド』、『ブラックロッド』といえば出てくるキャラクターの半数が狂人でもう半数は血の詰まった袋、という大変ピーキーな世界観に基づいたサイバー・オカルト・ファンタジーパンクだったわけですが、本作品はさにあらず。軽めのSFネタを枕にボーイ・ミーツ・ガールを語る、いかにもラノベな内容です。面白くなくはない。面白くなくはないんですけど、ただ、古橋秀之ともあろう人がこんな話を書いてる場合か、という気持ちは抑えがたく湧いてきます。こんなんじゃ乙一だよ! とか叫びながら読む(別に乙一を貶めているわけじゃない。同路線では敵わないと言いたい)。
 そんなわけで始終欲求不満、据わりの悪さを感じながら読み進めていたのです。しかし。しかししかし、ところがどっこい、最後の短編、『むかし、爆弾がおちてきて』。これが大変素晴らしかった!
 この小編に出てくるイメージは『ブラッドジャケット』にて既に描かれたものではあるでしょう。吸血鬼化の進行を食い止めるため、時の流れの遅い空間に閉じ込められてる女の子。お父さんは毎日そこに花を投げ込むんだけど、それは途中で止まってしまい、娘に届くことはない。大好きなシーンなんですが、本作ではこれをさらに一歩進め、完成させた感じです。この一編だけでも買った甲斐があった。詩情あふるる萌え。
 
 評価:【B+】