週刊少年ジャンプ52号感想・乱れ撃ち。

 『D.Gray-man』はともかく、『HUNTER×HUNTER』が長期休載に入ってしまったのがとても悲しいここ最近のジャンプ。その上、今週はジャガーさんまでなかった。来週はワンピースが休むらしいし、「ジャンプ…まこと薄くなり申した」状況はまだしばらく続きそうである。……などと唐突に前置きしつつ(前置きなのに唐突とは如何に)、久しぶりにジャンプ感想なぞをだらだらと書く。
 ◆ONE PIECE
 また回想かよ、というのは置いとくとして。
 ギア2のときにルフィが言ってた「弱くても構わないから一緒にいたい仲間」ってのは明らかにウソップを指してるわけだけど、ここまで熱い言葉を吐いておきながらすぐ隣にいる狙撃の王様の正体には微塵も思い当たらない、という状況がバスター・コールの十倍はスリリング。どう決着つけるつもりだ……?
「実はとっくに気づいてました」手法が有効かな。
 ◆NARUTO
 やはりどう考えても、ナルトはしばらく自宅で修行するのが最善策。同期の中で君が一番成長してないよ。
 ◆アイシールド21
 『アイシールド21』の正体を明かしてしまったのはちと早い。盤戸スパイダーズ戦が終わったところでセナの前に百人のアイシールド21が現れ「ふ、赤羽を倒したくらいでいい気になるなよ ヤツは我々アイシールド21の中では一番の小者……!」とか、全国大会では全チーム一人づつアイシールド21を擁していて倒すたびに「だが本物のアイシールド21はこんなもんじゃあねえぜ せいぜい気をつけな」とか、そういう展開が封殺されてしまった。ちぇ。
 ◆BLEACH
 先週号における「斑目一角の隊葬の用意を」の台詞、僕はとても格好良いと思った。ここで一角が本当に死ぬ、または死なないまでもぐちゃぐちゃに負けるような展開になったら凄いと思った。見直しても良いと思った。が、一角は死ななかった。それどころか卍解した。死ぬ要素はゼロになった。先の台詞は虚空に消えた。
 要するに、せっかく格好良い台詞使うんだったらそれなりの展開用意してくれよ、ということである。
 ◆テニスの王子様
 僕にもダブルスの無限の可能性が見えた。とてもすぐには語り切れない。別項にて。
 ◆いとうみきお先生の読み切り(タイトル失念)
 面白いー。言葉にしづらいのだけど、この人の絵ってなんか見てるだけでわくわくするんですよね。キャラの息吹を感じると言うか。是非連載獲得してください。
 ◆こち亀
 「10円ってまだ流通してるんですか?」に笑った。今回は『面白い方のこち亀』。
 ◆家庭教師ヒットマンREBORN!
 サクラクラ病、死ぬ気弾、近接格闘武器としてのポイズン・クッキング――。今回のエピソードで、我々はギャグ漫画ゆえの無茶な設定の数々がテコ入れに伴いバトル漫画の文脈に回収されていく、その一連の流れを見ることができた。総じて良い体験だったと言えよう。
 ◆魔人探偵脳噛ネウロ
 目下の興味はネウロの弱体化がお話的に吉と出るか凶と出るか。まあ、弥子たんが可愛い限りこの漫画は大丈夫。
 ◆ムヒョとロージーの魔法律相談事務所
 ムヒョパパの狙いがどこにあるのかまだ分からないけど、これがもしDQN魔法律家の一斉排除とかを目指してるものだとしたら面白い。そうしてくれ。
 あと、今井おねいさんは可愛い。あんな可愛いおねいさんとルームシェアしながら何も思うところのないロージーくんはますますホンモノである。
 ◆べしゃり暮らし
 ずっと気になっている作品。つまり、
「絶対に僕が嫌いなタイプの話なのに、それなりに楽しく読めてるってのはどういうことだ?」
 亀の功より年の功。森田まさのり先生は僕が思っている以上にとんでもなく漫画が巧いのかもしれない。
 ◆銀魂
 シリアスいくない。人情いくない。次週からまたがんばれ。
 ◆タカヤ
 連載開始時、『切法師』・『カイン』・『タカヤ』で最後まで生き残るのはタカヤであろう、と予言した僕であるが、それはあくまで予想であって、願望ではなかった。なんとかしてくれ。
 ◆Mr.FULLSWING
 普通にかませ犬高校と試合して、普通にそれほど重要度の高くないキャラ(葛桐さん)のサイドストーリーを描こうとしている。その余裕っぷりに驚愕。
 過去、これはどう考えても打ち切りだろう、と確信できるような急展開が少なくとも四、五回はあったのだが(最近では甲子園があっさり終わって県対抗総力戦が始まったとき)、それら全てを回避している。この漫画にだけは、我々が長年親しんできたジャンプの法則は通用しない。恐ろしいことである。
 ◆太臓もて王サーガ
 クオリティ変動の激しい漫画であるが、今週は相当高レベルだった。悠と宏海は作中最強の組み合わせであろう。しかし、掲載順は最低。
 バンデット・キースが嬉しい。遊戯王ネタは今一番良い(ほどよく忘れがちな)位置にある。わかってらっしゃる。
 だらだらと書いた挙句、だらだらと終わるぜ。あばよっと。

んで、今週の『テニスの王子様』感想(52号)

 二十一世紀初頭に考案されたテニス物理学の暫定的統一理論・《トガシ理論》によれば、青春学園三年・菊丸英二の動態はいわゆる《具現化系能力》の発露として記述される。この理論については皆さん当然お聞き及びであろうし、既に一定以上の賛同は得られているものと思われるが、今週号のエピソードはこの理論の正しさ――というのが大げさであれば、その適用範囲の広さ――を新たに保証するものであると考えられ、極めて重要である。
 今週号にて観測された事象を端的に表すならば、以下のようになる。「青春学園三年・大石秀一郎から発せられた微弱なオーラが菊丸の身体を厚さ数ミリ単位で包み込み、次の瞬間、二人の動きは完全に同調した」。トガシ理論に精通した方ならばもう気づいて頂けたであろうが、この現象は、同理論でいうところの《操作系能力》の発露であると見なせば、容易に理解できるものである。《同調》能力発現の直前、大石の洩らした「(身体が)イメージ通りに動かない」という言葉も、この仮説の傍証となっている。イメージ通りに動かない自分の身体を見限り、より強力な、イメージ通りに動かせる他者の肉体を求めた、という彼の心理が窺え、そこに能力発現の契機を見ることができるだろう。
 大石の能力が以上の仮説の通りであるとするならば、今後の青学黄金ペアの新戦術はこのようなものになるだろう:「身体能力に優れる菊丸を分身させることで数の面で優位に立ち、その上で分身の全てを洞察力に長けた大石が安全な位置からリモート・コントロールする」*1。いささか文学的に表現することを許してもらうならば、『「分身」と「遠隔操作」、この世にこれほど相性のいいものがあるだろうか?』である。大石は精神集中のため、コート脇で結跏趺坐でもしていると良い。これこそがダブルスの無限の可能性、新フォーメーション《大石の空・菊丸の夏》である。

*1:トガシ理論に精通した方ならば、分身系の念能力が構造的に持つ欠陥、いわゆる《カストロの誤謬》をこの戦術が回避していることに気づかれるであろう。カストロは具現化系能力・操作系能力を一人で並行して使おうとしたため失敗した。彼に必要だったのは何よりもまず、信頼できるダブルスパートナーだったのだ。

本日の脳内モラウさん

「サイト持ちにとって、安い話題は避けろってのは正論さ……だがそんなもんじゃねェだろ、漢の日記ってやつはよ」
 解説:
・『テニスの王子様』しかり『シグルイ』しかり、ネット人口に膾炙しすぎた話題に触れるのは多分に勇気が要り、かつ不毛になりがちな行為である。できれば避けて通るが正道だ。
・しかし、真に漢たる日記書きはそんなことは気に留めない。書きたいときに書きたいことを書くがままに書く。そして省みない。
・現在、私はそういう書き方を試している最中なので止めないでくれ。『ゴッドサイダー』風に言うのならば「俺にはいま、生き方などわからない。神も悪魔も関係ない」。以上だ。