森博嗣『ZOKU』

ZOKU (カッパノベルス)

ZOKU (カッパノベルス)

 悪の秘密結社《ZOKU》と正義の科学技術団体《TAI》がJR渋谷駅前で戦ったり戦わなかったり、そんなお話。
 話数が進むにつれてZOKUの活動はどんどんショボくなっていく。組織の象徴であった黒いボーイングは経費削減でオークション行き、パワーショベルとベニヤで造ったガンダムはお蔵入り、ついにはせっかく行った悪事に気づいてもらえず自作自演で新聞に投書。
 ヒーローもののアンチテーゼ……というよりはヒーローものにリアリティを持たせたらどうなるか、という思考実験? 言い換えれば冗談か。
 そういうわけで笑って読んでやれば良い本なんですが、その一方で、価値観多様、ポストモダーンな現在の世の中においてなおも善悪二元の戦いに憧れる老人の話、と考えてみるとなかなかに切ない気持ちも喚起されてきました。簡単には納まらない、不定形な印象です。
 評価:【C+】
 
 まあ、ぶっちゃけストーリー展開が物凄まじくタルいので(それを狙っているのは理解できるが)、このくらいの評価が妥当でしょう。
 【C+】ってなんだよ、て感じですが、単純に【C】と【B】の中間だと思ってやってください。当たり前の話なんですが【B】の周りに評価が集中しすぎるので解像度を上げてみようという苦肉の策であります。