禁止禁止、ポエム禁止。

奥様はネットワーカ (ダ・ヴィンチブックス)

奥様はネットワーカ (ダ・ヴィンチブックス)

 森博嗣奥様はネットワーカ』感想。
 コジマケン(浮遊研究室の絵を描いてる人だ)のポップなイラスト、そして楽しげなこのタイトル。この二つからほのぼのコメディ系の話を期待して読み始めたのだが、なんとびっくりサイコ・スリラー。これこそが最大のトリック。だーまさーれたー(最近多いパターン。自戒自戒)。
 六人の主要登場人物の間を視点がコロコロ変わる構成で、これをもし文章だけで書こうとしたら、キャラの書き分けだけでえらい手間がかかるだろう。そこをイラストの多用のおかげですんなり突破している。文章による人物描写の手を抜いている、のではない。そもそも、イラストを使うことを前提とした構成、デザインなのだろう。
 六人のキャラクターも、他の森作品の登場人物と比べるとわずかに趣を異にしている感じがする。一言でいうとちょっと俗っぽい。そこがほんの少しだけ新鮮で、すいすい読める。
 タイトルセンスも相変わらず素晴らしい。
 英語副題『Wife at Network』、二重に意味が取れて楽しい。
 ……が。ポエムは。ポエムだけは、辛い。物量が辛い。8ページ連続ポエムは辛い。それを1ユニットとして、くり返しくり返し来るのが辛い。何事もバランスが肝心、と神さまも言っている。
 評価:【C+】
 そんなにポエムが嫌いか、と訊かれればはいしんどいですと答える。