『CUBE』 meets 『セブン』 〜出逢うべきでない二人〜

 というわけで「ソウ」(SAW)を観てきたのだった。公式サイト。誰が呼んだか知らないが、“『CUBE』 meets 『セブン』”の肩書きが的確すぎて笑う。つまりそういう映画である。まあ、それで二作品分面白くなればラッキーだったが、そうそう巧くいくもんでもなかったようだ。
 大きく分けて閉鎖空間パート(以下CUBEパートと呼称)とシリアルキラー*1を追う刑事パート(以下セブンパートと呼称)の二つの視点があるのだが、これがいまいち噛み合わず、本当に別々の映画を並べただけのような印象。しかもそれぞれのパートで使える時間は半分ずつなもんだから、両者とも今ひとつストーリーが薄いという残念っぷり。最初に肩書き付けた奴、絶対皮肉のつもりだよ!
 まあ文句ばかり言っていてもつまらないので、以下、僕の思う『ソウを三倍面白くする法』を列挙してみよう。
 1.セブンパート削除。刑事のキャラ立てとか、いっそ奥さん・娘のエピソードとかも一切止めて、シリアルキラー氏の過去の犯行を見せる程度に留める。サクっと。
 2.CUBEパート、捕らわれているアダム・ゴードン間の心理戦を描く。というか僕はそういうのを期待して観に行ったんだ。描け。早い段階で明確に敵対させちゃって良いと思う(表面的には協力しているが、実際は両者何か企んでいる、とか)。
 3.アダムにも勝利条件を。今のルールではアダムがただのエサだ。第二項のためにも必須。
 4.むしろシリアルキラー氏出てこない方が良いんじゃね? 出すにしろ、動機をぺらぺら喋らん方が良い。
 結局のところ、閉鎖空間をもっと生かせ、ということになる。その点、『CUBE』や『死刑執行中脱獄進行中』は偉い。言い尽くされたことではあるが、喋る殺人鬼よりも無言の罠の群れの方が怖いのだ*2。外部の状況を描くということはこのメリットを失うことに繋がるのだから、それを補い得る何かが必要になるだろう*3
 評価:【B+】
 文章の割に評価は高い。まあ期待している面白さとは違ったが、ホラー&サプライズとして充分楽しめたのでこんなんで。

*1:直接手を下してはいないので正確には殺人でない、という話もあったが、人の身体にオイル塗りたくって火気のある部屋に放置する、のには未必の故意を云々するまでもなく殺人罪が適用されるであろう。というわけで本稿では彼を殺人犯として扱う。

*2:これ、本当にそうか? 言い切れるか? 粗い気がする。やりようだろう。喋る殺人鬼だって、充分怖く・或いは面白くできるはずだ。『ブライトライツ・ホーリーランド』のG.G.スレイマンはよく喋る、楽しい殺人鬼だったなあ。ああ、ズレてるズレてる。

*3:綾辻行人十角館の殺人』が好例かな。