『星の玉子さま』立ち読み中に思ったことを脈絡つけずに投げる。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/11/03
- メディア: 単行本
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問1:半径4の大円の外側を半径1の小円が滑らずに1まわりします。その間に、小円は何回転するでしょうか?
答えは四回転であり、五回転である。
問2:半径4の大円の内側を半径1の小円が滑らずに1まわりします。その間に、小円は何回転するでしょうか?
答えは四回転であり、三回転である。
森博嗣の絵本『STAR EGG 星の玉子さま』*1を読んできた。
前半部分は物理・数学パート、後半部分は哲学パート……と分けて理解しても良いのだが、この二つ、実はシームレスに繋がっているのではないか。『笑わない数学者』でも触れられた『どちらが内側か』というテーマは、星全体に家を拡げようとするおじさんの話であり、半径4の星を半径1の一輪車で一周する少年の話でもあるのだ。なるほど、なるほど。自然科学ってのはあらゆる哲学の母なのかも。なるほど、なるほど、なるほどね……。
子供のころを思い出した。夏の日差しでくっきりと作られた影、影と影を近づけると、まるで水滴を近づけるときみたいに、お互いに伸びてくっついた。確かにそう見えた。友達に言った。目の錯覚だと言われた。何度も何度も確かめた。錯覚じゃなかった。
その頃の夏休み、『算数大すき』という番組をNHK教育でやっていた。数学者の秋山仁とノッポさんがコンビを組んでる番組で、僕は毎日ビデオに撮って、夜になってから観ていた。リアルタイムで観ることは出来なかった。何故なら僕は小学生だったからだ。小学生には付き合いってものがある。夏休みの午後は友達と遊ばなくてはならない。
ある日、友達が僕の家に遊びに来た。そこで彼は、『算数大すき』とラベルの貼られたビデオテープを発見した。「算数、大好きなん?」冗談めかして訊いてきた友人に対し、僕は何かが無性に恥ずかしくて、「親が見ろってうるさくて……」とか答えたと思う。優等生というのは、基本的に、恥ずかしいものだ。
関係ない。とても関係ない話だ。でも、今僕が小学生だったなら、『算数大すき』の代わりを、この本が担っていたのかもしれない。そのパーツは鳩尾のあたりにキチっとはまっていて、ときどき忘れがちだけど、いつでもそこにあるのだろう。
*1:文脈から外れるのでこっちに書くのだが、この本の発行に際し、森博嗣はまたとんでもない発言をかましている。印税0%……! 千冊買取り……っ! 以前から『口を開けばカリスマ言説』でお馴染みの森先生であるが、いい加減十二分なので、パラディンにでもクラスチェンジすれば良いと思う。