東野圭吾『超・殺人事件 推理作家の苦悩』感想

超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫)

超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫)

 『名探偵の掟』(感想:2004/12/04)が推理小説のお約束に対する皮肉気味ジョークであったのに対し、こっちは出版業界を取り巻く現在の状況に対する皮肉気味ジョーク。皮肉度はこちらの方が若干高いものの、『掟』で見られたような鼻につくギャグがないので、ストレスはあまり感じない。例によって文章に全く色気がないけど、こういう不条理系の作品には淡白な文体も良く似合うし、上手く噛み合ってる。
 しかしそれでも、全体的にぬるいなあという印象は拭い難い。これが『世にも奇妙な物語』であれば満足もいくんだろうけど(実際、『超税金対策殺人事件』は原作に使われていた。西村雅彦主演)、小説形式だと物足りなさを感じてしまう。
 あと、『超予告殺人事件』だけ少し毛色が違う。この作品さえなければ、現実の殺人事件は一個も起きてないやん! というギャグが成立して美しいのに。惜しいなあ。
 評価:【B】