僕たちは墜ちる、けど堕ちはしない。オチはある。

堕ちていく僕たち (集英社文庫)

堕ちていく僕たち (集英社文庫)

 森博嗣墜ちていく僕たち』再読。
 ひょんなことから、ある日突然男が女に女が男に……という聞くからにげんなりする、手垢のついた設定で貫かれた連作短編形式。文体は森博嗣が100%ライトに徹底したとき特有の例のあれであり、好みの分かれるところであろう。設定×、文体も人によりけり、ということで僕の周囲では良い評判を聞いた例がないけど、僕は悪くないと思っているので、きっと悪くない。悪くはないよ。
 最初の二話、表題作の『墜ちていく僕たち』と『舞い上がる俺たち』が良い。ライトな語り口に始まりちょっと生々しい中盤、そしてウェットなオチ。異色作的な扱いをよくされてるけど、この点では実に森作品らしい感じではありませんか。そして三話から先は、この二話で叩き込んだ設定・お約束を生かして、ちょっとだけミステリなお話。最後にちょっと捻った結末。構成も巧いよ。

 評価:【B】
 そうだ、言い忘れたけど、随所に挟まれる“腐った女子と書いて”腐女子描写がもの凄くそれっぽい。今までの作品にだってガンダムヲタくらいなら出てきてたけど、それらとは比較にならない圧倒的濃度。「リミッター解除だ森先生!」「がー」