まだまだ続くよ感想文。

 まだまだー。潤いのない生活送ってると読書が進むもんなのよ。
 舞城王太郎『みんな元気。』【B】

みんな元気。

みんな元気。

 中・短編を五編収録。『我が家のトトロ』と『スクールアタック・シンドローム』が面白い。この二つは舞城王太郎にしてはすごい丁寧なつくりになっていて、その分勢いは弱くなってる感じだけど、新鮮な味わいです。他の三つは今一つかな……。勢いがあれば良いってものじゃないけど、勢いが必要な作品には勢いが必要なのです。それがない。ように思う。
 浅暮三文『ダブ(エ)ストン街道』【B】
ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)

 第八回メフィスト賞受賞作。「迷うべくして迷う場所」ダブ(エ)ストンで恋人を捜し続ける日本人・ケンの旅路を淡々と語る。古き良き流離系幻想小説といった趣き。
 随所でダブ(エ)ストンにおける特殊な文化・習俗が描かれるのだけど、それら全てが「迷い」から派生したもので一貫しているため、架空世界に妙な説得力が生じていて良い。例えばダブ(エ)ストンでは矢印が神聖なマークであり(行く先を示してくれるから)、特に墓には上向きの矢印が記される(せめて天国には迷わず行けるように、の意味を込めて)。逆に渦巻き模様は永遠に彷徨うことを意味するため不吉の象徴であり、そのためダブ(エ)ストンでは巻貝を食べない。スパゲティも麺がうねうねこんがらがってると不吉なので、細長い皿に麺が絡まないようにまっすぐ盛り付ける。などなど。面白い。
 ただ、語り口があまりにも淡々としすぎているせいか全体的に寓話っぽく見えてしまい、いまいち感情移入できないのは弱点だと思う。感動シーンがコントっぽく見えてしまうのだ。それが狙ったものなのかどうか判断できず、どうにも居心地が悪い。
 筒井康隆『エロチック街道』【B】【心】
エロチック街道 (新潮文庫)

エロチック街道 (新潮文庫)

 お噂はかねがねであったが――確かにこれはすごい、ロケンローだわ。
 まず『日本地球ことば教える学部』に大笑い。宇宙人の講師が宇宙人の生徒相手に延々と間違った日本語を教えるという、それだけの短編。
 興味深く読めたのは『遍在』『われらの地図』。同じアイディアを別々の形に展開してこの二つになったのだろうか。聞いたところによると、このアイディアの発展系が『虚人たち』に繋がっていくそうなので、次はそれで行こうか。