サボテン持ってレコード持って やりかけだったパズルは捨て

 最終面接やらなんやらでこの星の僻地へと旅立つ。
 この会社に採用された場合、高確率でここに勤めることになるのだが……電車を降りるととりあえずそこは無人駅。しょげる。下車する人間は幾人かいるが、匂いでわかる、こいつら全員就活戦士だ。それ以外の人種などいない。車もそれほど走ってない。襟裳の春は何もない――でもサークルKはあった。大丈夫大丈夫、どこに住んだって、ジャンプとインターネット、それにお天道様はついてくるさ。Amazon使えば本も完璧。大丈夫・大丈夫。言い聞かせて会場へ。
 面接は普通。というか普通でない面接など未だ一度も受けていない。薄々気づいてはいたが、世の中は普通なのだ。まあ、その普通にも若干のズレがあって、その偏差をその場その場で素早く察知できる力をコミュニケーション能力と呼び習わすのだろうな。普通エミュレートして普通に答える。普通に終わる。
 帰り道、共に闘った戦士と新幹線で一緒になり、互いの世間知を披露しあう。東京までは二時間弱。バッグには古川日出男『アラビアの夜の種族』が入っていたが、初対面の相手をほっぽって読み出すわけにもいかない。こういった判断を下せるあたり、僕の社会性もまだまだまともに機能していると言える。笑顔でさよなら。縁があれば、また僻地でまみえることもあるだろう。
 最近、可能性がどんどん収束していくのを感じる。言い換えるならΦがどんどん壊れている。善し悪しである。