ガイ先生はプロ、朽木白哉はアマ / 正しい命のやりとり描写

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「人の心は変わるもの」
「ふむ」
「漫画もまた変わるもの」
「ほう」
「恥を忍んで申し上げますが、わたくし――ここのところの『NARUTO』、少し見直してやっても良いかな、と思っているのです」
「二部に入ってから、ということかな」
「はい。きっかけはガイVS鬼鮫戦でした。この戦闘、決まり手はガイ先生の六門開放なのですが、確かこの技、八門まで開くとdeathなんですね。七門でも満身創痍。つまり六門というのは実戦で使いうるほぼ最強技と思われるのですが、それをガイ先生、ちょっと形勢悪しと見てとるや、迷わず使ってしまうんです。過剰な演出を施すことなく、至極あっさりと。これは渋いです。実戦において、最強技というのは決して出し惜しむものではない――命のやりとりの緊張感が伝わる、良い描写と言えます」
「そういや、ナルトもすぐ螺旋丸使うよな」
「そう、初手螺旋丸ですよ。あれも大変正しい。遊びでやってるんじゃないんだ。僕はプロがプロらしく活躍する様を見るのが好きなのですが、その点で結構合格水準ではないかと。出てくるキャラの全員が全員、デフォルトで油断している『BLEACH』とは大違いです」
「あ、そっちが本題?」
「ソウル・ソサエティ編は本当に許せないことだらけでした。まず、護廷十三隊にプロ根性を持ち合わせた奴が一人もいない。とりあえず一護くんをなめてかかる」
「対して一護くんは、お得意の首筋寸止めで相手の油断を正してあげるんだよな。随分余裕あんなーおい。ルキア助けたいんちゃうんかー。わざわざ挑発してなんの得が君にある」
「極めつけは藍染隊長をみんなで囲むシーンですよ。彼の能力はあの通り反則ですから、不意をついた暗殺くらいしか対抗手段はない。そしてそのチャンスはあった。にも関わらず、ここでまた――また寸止めです! 意味がわからない。ソウル・ソサエティの高官が十人も雁首並べてこの間抜けぶりですよ。まあ、意味がわからないといえば嬉々として自分の能力を解説する藍染隊長も相当分裂気味ですが、他の隊長連中のぬるい対応のおかげで助かっている。つまり、敵方のミスが、味方のミスによってフォローされているのです。なんだこの展開」
「で・藍染隊長にはまんまと、当然のごとく逃げられると。やれやれ」
「さらに加えて恐ろしいことに、この一連の失態、『作中でミスとして認識されていない』んです。仕方がないこととして処理されている。まったく、まったく、まったくですよ。まともな危機管理能力を持った奴はおらんのかー」
「『BLEACH』の気持ち悪さって結局のところ、キャラクターの行動がキャラクターの意志でなしに、少年漫画的要請に従っていることに起因してると思うんだよね。全員、『ピンチを招くために行動している』。そう考えてみると、ドラゴンボールとか幽遊白書といった往年のバトル漫画において、主人公が戦闘狂であることが明言されているのには意味があったのだな。熱血バトルを描きたいという少年漫画的要請と、キャラクターの目的とが合致しているのだ」
「まあ、それはかなり強引な手法ですけどね。そりゃブルマも呆れますよ」
「でも、そういった醒めた一般人の視点をちゃんと描いたのが、鳥山明のモラルっていうか、真面目さだったんじゃないかな。久保帯人には、残念ながらそれを感じない、と」
「ですね。一護くんは人助けがしたいのかバトルマニアなのかはっきりしてください。護廷十三隊の皆さんはもっとプロ意識を持って仕事に取り組んでください。男子は掃除をサボらないでください。まとめると以上です」
「それにしてもユートくんがたまに使う方言は可愛すぎますね。どうしてくれるんでしょう」
「かってんぐわぁー」