『クビシメロマンチスト』、非常に好意的に解釈した場合。ネタバレ注意。
クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社ノベルス)
- 作者: 西尾維新,take
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05/08
- メディア: 新書
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なんとびっくり、西尾先生は二作目にして早くも垢抜けていた。全編通して、致命的にしんどい表現が十箇所くらいしかなかったよ!(誉めてます) 苦痛なく読み進められるというだけで、第一作から大きな進歩と言えましょう。
キャラ萌えに関しては相変わらず、何か勘違いしているように思えてならないのですが*1、連続殺人鬼の零崎人識くん、彼だけははなかなか良い味出してました。連続殺人鬼と主人公くんがカラオケで待ち合わせするシーンも面白い。こういった、こちらの予想の半歩先を行く展開がいくつかあって、それがまた読み進める駆動力を上昇させています。巧い。
この作品で一つ非常に興味深く読めたのは、いわゆる『信頼できない語り手』の極地――即ち一人称の主人公が地の文で自分自身に対して嘘を吐いている――に到達している(ように解釈できる)点。この解釈に則った場合、フェア・アンフェアで言えば間違いなくアンフェアなんですが、僕の趣味としては、『語り手が信頼に値しないこと』を事前に巧く匂わせてくれさえすればまあOKかなって感じです。で・本書における最も斬新な部分がここにありまして、西尾先生、この『匂わせ』にギャルゲー的お約束を活用していらっしゃるんですね。言い換えるならば、「西尾維新? ギャルゲーだろ」という読者の先入観がミスリーディングとして機能している。すげー。西尾先生すげー。前回(『クビキリサイクル』感想)、地の文に虚偽の記述があるとかで難癖つけようとしたのですが、そんな次元は完全に超越しています。
あ、あとオチはエヴァでした。劇場版。
評価:【B+】【心】
おまけ:
本筋にはあまり関わらないけど、検索してて発見した『そして誰もいなくなった』解説。
『アクロイド殺害事件』よりも『そして誰もいなくなった』の方が叙述トリックとしてよっぽど丁寧だよ、というお話。もちろん両作品ともネタを割っている。未読の方は注意。