映画『姑獲鳥の夏』感想。

 二週間ほど前に観てきたのですが、鑑賞途中、恥ずかしさと切なさの入り混じった如何ともしがたい感情からなにやら体育座りがしたくなりました。あるいは久遠寺牧朗のポーズ。今にして思えば事前の覚悟が足りなかったのでしょう。友人やネットを通じてあれほどの警告を受けていたというのに、まあ、最悪でもネタにはなるだろう、などと抜かしていた我々は幸福な間抜け野郎でした。この世には、ネタにならない駄目さも存在するのだよ――(例の台詞を真似ようとして途中でやめた)。
 敗因は、原作に忠実たろうとしすぎたことじゃないですかね。600ページの話をほとんど端折らずにやろうとするもんだから展開が早い早い。特に憑物落としのシーンは絶望的。「えいっ」「ぎゃー」「バターン」「産まれた!?」「ハイ、解決編!」 カタルシスって知ってるかー。
 以下、いくつか注目ポイントを挙げる。
・開始二分で登場以来、たびたび現れてテンションを下げてくれる姑獲鳥(の幻覚)。
・関口よりも背の低い木場修。むむ。
・京極妹が武闘派。ぼーっとしてる関口に怒鳴ったりする。彼女の関口に対する『病人を扱うような優しさ』が好きだったんだけども……。
・ねこはかわいい。
・少しくらい誉めとこう。『雪絵さんこと篠原涼子が赤ん坊を預かってきて逃げるように家を出る関口』のシーン。確か原作にはなかったと思うんだけども、あれは巧い。あれだけで『川赤子』と同等の捕捉説明になり得る、というのは言いすぎか。
・スポットライトはとても要らない。
・乱舞する原色照明も。『2001年宇宙の旅』クライマックスのごとき様相を呈する憑物落とし。
・やっつけ感の漂う暴徒。
・『とりあえず館が燃えればオチ』という思想。
・屋上狭すぎ。
・スタッフロール後に爆弾。
 総評。全体的に手堅い。役者はみんな頑張ってる。お金もある程度かかってる(=「安さ」が中途半端)。妙な部分の多くが監督の前衛的センスに起因している。よってネタとしても楽しみにくい。
 
 評価:【D+】