飾磨が良い。飾磨たんに萌え萌え。

太陽の塔

太陽の塔

 森見登美彦太陽の塔』読了。
 12月24日、京都――。負け犬男子大学生たちの強迫観念が臨界点を越えた時、四条河原町に(実にささやかな)奇跡が起きる! 第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
 いやー、良いもの読みました。読んでる間、文章の一つ一つから滲み出る“懐かしさ”にじんじんしっぱなし。あれです、椎名誠『哀愁の町に霧が降るのだ』+侍魂以前の日記系サイト、そんな感じの味わいです。オタクと言うよりはダメ人間、伊集院光の立ち位置に近い。わかりますかねこのニュアンス。
 ストーリーはあってないようなもので、読み進める牽引力に若干欠ける感はあります。構成も、なんか思いついた順に書いてるみたいだし。が、それらを十分補いきれるほどに文章そのものが面白い。なんというか、油断してるところが一つもないんですね。一文残らず節制と拘りが感じられる。別に事件もない、平凡な(むしろ鬱々とした)日常風景をここまで楽しく読ませるとは相当なもの。巧いです。
 お気に入りのシーンをいくつか挙げるならば、クライマックス、四条河原町に一人づつ集結していくところなんか良いですね。その後あっさり別れて行くのもまた良し。あとは飾磨の「聞かなかったことにしてくれ」とか、飾磨の「己が未完成の魂を恥じる」とか、飾磨の「おれの」「ゆめ」「かえせよううう」とか――飾磨たん萌え。
 
 評価:【B+】