おもいだす→もっとおもいだす→ふかくおもいだす→わすれる

 オタクの研究をしている文学部の友人に請われ、インタビューに答えることに。友人の研究材料にされるというのはなかなか斬新な感覚である。あの録音テープは厳重に保管し、卒論が終わったら速やかに破棄してくださいね。>友人
 まず、ツカミの質問『自分はオタクであると思うか』にノータイムでYesと答えたのち、『貴方にとってのオタクの定義とは』『自分がオタクであると最初に実感したのはいつのことか』といったお題で雑談。ほとんどいつもの居酒屋トーク。気づけば三時間が過ぎていた。
 オタクの定義に関しては本当によくわからないので措くとして、もう一方のお題、自分のオタク精神史のようなものを思い返す作業は痛々しくも面白い。男子たるもの、幼少期には誰でもドラゴンボールごっこの一度や二度やると思いますが、小学校低学年の頃、僕が愛用していたキャラは悟空でもベジータでもなくクリリンでした。多分、気円斬の一発逆転っぷりが好きだったのだと思います。当たればフリーザだってただじゃ済まないからね。このあたり、当時にして既にオタク的素養は芽吹いていた、と見ることができるかもしれません。
 (→もっとおもいだす)
 『不老不死を獲得したフリーザ』(友人の厨設定)に対し気円斬連発で立ち向かう俺クリリン気円斬を喰らっても不老不死だから効かない、と主張する友人に対し、「それは違う。不老不死とはいえ傷は負うはずだ。そして不老不死だからこそ、致命傷を負っても死ぬことができず、永遠に苦しむのだ」などと滔々と弁ずる低学年の僕。オタクだ。どう考えてもオタクだこの子。