こんなにも君が好きなのに 君は何も応えない

 佐藤友哉水没ピアノ』読了。
 えーと。タイトルはすごく格好良いと思う。そして装丁、こちらも素晴らしく綺麗だ。暗色の湖に沈みゆくピアノ、その上に一人座って泣く少年。これで期待するなって言う方が無理だろう? 誰も僕を責めることはできない、そうだろう? ちくしょう、鏡家サーガではこれが一番面白いって言った奴は誰だ(あいつだ)。
 とにかく冗長。390ページも使う話ではない。そのくせ回収されない伏線の山、加えてご都合主義にすぎるミスディレクション。全体的に詰めが甘いよ。構成適当だよ。まあ、真っ当なミステリのような評価基準でユヤタンを量ろうってのがそもそも間違ってる、という見方はあるが……。しかしそうなると、もうユヤタンの自虐っぷりを楽しむくらいしか残ってない。恐らくユヤタン自身をモデルにしたであろう登場人物の、妙にリアルで卑近な痛めつけられっぷりとか。ま、私小説ですよね。私小説が悪いってわけじゃないけど、私小説ですよね。
 文章が若干マズくなってる感じ、これにもちと参った。『持って回った語り口』がそろそろ許容範囲を越え始めたというか。下手に西尾維新の影響を受け始めているというか……。その道はヤヴァい。《通るべきでない道》ってヤツだぜ。
 
 評価:【C+】