恩田陸『六番目の小夜子』読了。

六番目の小夜子 (新潮文庫)

六番目の小夜子 (新潮文庫)

 我々はそろそろ、竜頭蛇尾であるということについての態度を決めなくてはならないだろう。竜頭蛇尾なのは良くない。良くないが、では尻尾が蛇なら正直に頭も蛇にしておけよ、という話になるかといえばならない。尻尾も蛇で頭も蛇つまりただの蛇を見せられるくらいなら、頭だけでも竜を見せてくれる方がなんぼかマシだ。蛇の尻尾でがっかりしても、それまでに感じたどきどきは『なかったこと』にはならない。ならないんじゃないかな。たぶんならない。
 途中までは大変面白い。学園祭の朗読劇など、なぜこれがクライマックスにくるよう構成しないのか、と思えるほどの鮮烈さだ。こちらの読書スピードを自在にコントロールされるという戦慄。本の中の集団ヒステリーに巻き込まれる感覚――。
 というわけで、オチのつけ方が微妙とか、そんなつまらないことは見逃しておこうじゃないか。謎めいた雰囲気、思わせぶりな描写の数々は楽しかったのだから。三人称の視点人物が固定されてない? 見逃せ見逃せ。
 
 評価:【B】