石持浅海『扉は閉ざされたまま』読了。

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

 2006年版このミス・本ミス共に二位。一位の『容疑者Xの献身』(感想→id:rindoh-r:20060228)と同じく、これまた倒叙形式です。『密室を破らずに密室殺人を解決する』、とにかくこの一点のみに拘った作品で、タイトル通り最後まで扉は閉ざされたまま。現場を見ず、死体を見ず、そもそも事件が起きたかどうかも定かでないまま、探偵役は犯人を指摘する。その心意気や非常に良し。
 しかし。しかし・しかし〜と言いたくなるのは、こんな緊張感のない会話文を延々と読んだのはひさびさっつーか、たった二百ページ少々読むのにこれだけ中座したのは初めてっつーか、要するに読んでて面白くはないからですね。ロジックのみに特化した作品はやっぱり肌に合わないやも。
 で、動機。動機は実に異常で、似非ヒューマニストをじっくり十年煮込んだらこんな狂人ができました! といったところ。本気で怖気が走ります。そこに探偵役が『高潔な意志』を見てしまったりするのでもう……。マジか! マジで言っちゃってんのか、お前!?
 こんな理由で人を殺す人間は現実にはいない、とはいえ、こんな理由で人を殺したいほど憎める人間はいると思うのですよ。それも結構な数。これこそが、僕にとっての『吐き気を催す邪悪』です。ぞわぞわした。がくがくした。おえっときた。
 
 評価:【C】【心】