シオドア・スタージョン『一角獣・多角獣』読了。

一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)

一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)

 初めてのスタージョン。SFにファンタジーにホラーにミステリと、節操のない短編集です。アヴラム・デイヴィッドスンさんもそうでしたけど、分類上『SF作家』と呼ばれてる方々の中にはこういうナチュラルボーン・規格外みたいなのがゴロゴロしてるっぽい。大変楽しめたのですが、楽しさを説明するのが非常に困難。
 ◆一角獣の泉 【B】
 ユニコーンを使って処女当てをする話。伝説の聖獣を便利ツールとして使い倒す精神にいきなりシャッポを脱ぎたい心持ちになる。馬鹿だ。どんなに格調高く書いても騙されない、これは絶対馬鹿話だ。最後はユニコーンの野郎、カタブツに見えて気が利いてるじゃねえか! 的オチ。
 ◆熊人形 【A】
 構成良し、映像良し。妙に好き。
 ◆ビアンカの手 【B】
 白痴の手タレに手フェチの男が求婚する(早口言葉)。
 ビアンカさんがマジで気持ち悪いよ。白痴萌えの人は反省してください。
 ◆孤独の円盤 【B+】
 孤独と孤独を引き合わせるために、作者はここまでしてやらねばならんのか。そういう意味で乙一風。これも馬鹿と紙一重だと思う。
 ◆めぐりあい 【B】
 設定がいまひとつわからず。シジジイじゃないことはわかった。
 ◆ふわふわちゃん 【B+】
 可愛いネコってのは人くらい殺してるもんなのよ。
 ◆反対側のセックス 【B+】
 シャム双生児の死体が出てきた時点でミステリを期待してしまうわけだが、その実……。シジジイが出てくる話は好きじゃないみたい。
 ◆死ね、名演奏家、死ね 【A】
 タイトルだけで相当勝っている。語り口も巧く、普通に主人公に感情移入して読んでしまった。うん、ああいうナイスガイは殺すしかないよね。泣ける。
 ◆監房ともだち 【A】
 タイトルだけで完全に勝っている。加えて恐ろしく巧い語り口、わけのわからない展開、妙に面白い。とりあえずこの短編集ではベスト。
 ◆考え方 【B+】
 オチを聞いて一度はなるほど! と思うが、レトリックに騙されてるだけのような気もしてくる。
 好きな話ほど内容を説明できないことに気づいた。怖がっているのか……。
 
 評価(総合):【A】【心】