森博嗣『λに歯がない』読了

λに歯がない (講談社ノベルス)

λに歯がない (講談社ノベルス)

 うーん、まいった。これまでなんとか、森先生の思考をトレースし、仕掛けを見抜き、Gシリーズに込められた思想を読み取ろう、というスタンスで頑張ってきた我々でありましたが、今回はもう、取っ掛かりすら掴めないレベル。みんなごめんよ。僕ではもう、勝負にならないのかもしれない。そんな力、初めからなかったのかもしれない。シリーズが完結するまで、大人しく、身の丈を弁えて、隅っこで柔軟体操でもしているべきかもしれない。
 そういうわけで大局を語ることは諦め、戦術的というか、階層の低い話をするが、赤柳初朗の地の文で『彼』と呼ばれないっぷりはやはり異常。これが一度もないようであれば自信を持って赤柳初朗=香具山紫子説を採っているところだが、これは既に破綻している(『τになるまで待って』感想を参照のこと)。しかし、一回の『彼』くらいならなあ……。『夢・出逢い・魔性』で見せた超絶技巧を思い出せば、なんとかなりそうな気もしてくるが。他に『彼』って書かれてるところあったっけ。もし知ってる方があれば、指摘して頂けると嬉しい(他人任せか)。
 
 暫定評価:【C+】
 完全に余談であるが、amazonレビューには「まだ読んでいませんが、星五つ」とかあって、なかなか楽しませてくれる。