京極夏彦『邪魅の雫』読了
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/09/27
- メディア: 新書
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以前(id:rindoh-r:20061009)「やーいセカイ系」「セカイ系って言う奴がセカイ系なんだぞ!」というのを書いたのですけど、まさしくそのような話でありました。セカイ系をDISってたオレがいつの間にかセカイ系に! きゃあ! とそういう話。
◆京極堂、書評サイトを語る
こちらについては、評論というのはあることないこと面白おかしく書くしかないんだよ、面白ければ勝ちなんだよ、というお定まりの結論。これは僕も思いますし、そのつもりでやってますけど、でもいつまでもここにいて良いの? と思わないでもない。文芸批評というものについて僕が知ってることといえば、筒井康隆『文学部唯野教授』で聞きかじった程度のものですけど、そもそもの成り立ちとしては「良いもの・悪いものの基準を決めようぜ」という動機があったわけですよね? で、色々試行錯誤した後に「うん、それ無理」という結論に落ち着いた、と。実に順当な結論なわけですが、そこで終わって良いのかなあとね、ほんの少しだけ思ってしまうわけですよ。そんなことはきっと、文学部の人とかが考えているのでしょうが……(思考停止、浮上)。
◆あと、関口くんのクラスチェンジについて
『脳をちぎる』内のここ(id:gentledog:20061001#p1)が面白かったです。
「私」であることを放逐した関口は真人間へと成長していく。
一人称→三人称の変化を客観性の獲得と重ね合わせた視点。鋭い。
◆総評
読んでて大変楽しく、順位でいえば『姑獲鳥』『魍魎』の次くらいに来るんじゃねえのとさえ思いましたが、これは自身のコンディションの問題だろうなあという確信もある。この態勢で読み返せば評価変わる作品は絶対あるよ。『鉄鼠』とか、そろそろ再戦する頃合かな。
評価:【A+】