森博嗣『少し変わった子あります』読了

少し変わった子あります

少し変わった子あります

 ・装丁が良いなあ。漠とした女性の顔と白い空間。ほとんど夜の話なのにね。
 ・予約する度に場所の変わる名前のない料理店で、名前のない女性と、名前のない料理を食べる、という話。それだけなんだけど、これが実に読ませる。ポエムポエムしてないけど実質ポエム。うん、これくらいが心地良いな。好きすきすー。
 ・一つ文句をつける。徹底的に名前を排除し、『抽象』を書く、という向きなんでしょうけど、それにしてはオチが定型。このオチのおかげで、「こういう話」と言えてしまう。勿体ない。もっと茫洋として、掴みどころのないままに終わってくれた方がらしかったのではないかなと。まあいいけどね。好きすきすー。
 ・それにしても、最近の森先生はこれまでになくメジャーを意識しているように思われる。間口が広い。今森作品を薦めるとしたら、僕と同世代かそれ以下の相手なら『カクレカラクリ』、年長者相手なら本書になるだろう。わずかに文学の香り漂うところが、年長者にお薦めしやすい要素の一つよ。
 
 評価:【B+】