東のツンデレVS西のクーデレ、頂上対決 / 『人間は考えるFになる』

人間は考えるFになる

人間は考えるFになる

 土屋賢二 / 森博嗣人間は考えるFになる』読了。対談本です。お茶の水女子大学教授にしてエッセイストである土屋賢二先生と、国立N大学助教授にして小説家である我らが森先生の対談本。片や哲学、片やコンクリートと、専攻の違いこそあれど、社会的立場には通じるところの多い二人。話題には事欠かないであろう、と企画した者は思ったのでしょうが──でしょうが。
 ええと。
 土屋先生の芸風というのがですね、基本的に「わざと間違ったことを言う」、その上でのツッコミ待ちなんですね。本心を出さず、嘘・大げさ・誤解をまねく表現を放ったところに相手のレスポンスがあって初めて芸として完成する。言うなればツンデレです。東のツンデレ土屋賢二
 一方、森先生の芸風といえばご存知のように、そこはごまかすところなんじゃないかな、社交辞令とか言うべきところなんじゃないかな、という局面で身も蓋もない本音を放ち、鑑賞者を萌え上がらせる、といったもの。言うなれば素直クールです。西のクーデレ・森博嗣
 そういったわけで本書、恐らくは企画者も意図しなかったところでツンデレ素直クールを噛み合わせるとどうなるか、という一大実験になっている感があります。ええ、結果はなかなかの残虐ファイトになってますよ。土屋先生のせっかくのボケを要らぬスルー力で回避し続ける森先生。先生、もう少しこう何というか、手心というか……。やはりスタンドアローンの運用では、そうそう素直クールには敵わないということか。