えすのサカエ『未来日記(1)(2)』

未来日記 (1) (角川コミックス・エース (KCA129-5))

未来日記 (1) (角川コミックス・エース (KCA129-5))

未来日記 (2) (カドカワコミックスAエース)

未来日記 (2) (カドカワコミックスAエース)

 うん、それなり! このそれなり感になんかちょっと安心してしまうのだった。というのも最近、読む漫画読む漫画Aクラス以上の傑作ばかりで、ってこれはどう考えても幸福なことなんだけれども、しかし同時に「こんなにも面白い漫画が世に溢れているというのに俺って奴は!」みたいな自分でもわけのわからぬ感情の波に飲まれてごろごろ転がるエブリディロープライス(縄ごはん)だったのですよ。その点、この作品は大丈夫。文句なしのBクラスです。つまらなくはないけれど、読後に満面の笑顔で普通! と叫べるような。
 簡単にあらすじを述べておきますと、とりあえず十二人の未来日記使いがいると。あ、予知能力者ね。で、その十二人は不明な理由によりちょっと殺し合いをしなくてはならないと。(本当に不明な理由としか言いようがない)で・各々、殺し合いに勝ち残るべくおのれの未来日記を活用して頑張ると。そして主人公の中学生・雪輝くんは、突如こんなバトルロイヤルに巻き込まれてしまい困ってしまったと。困ってしまったのだった、と。
 面白かったのは、各人の有する未来日記のフォーマットが、それぞれが元々書いていた日記の形式に準拠している、という点ですね。そしてそのことにより、それぞれが手にする情報の性質に差が生じる。たとえば主人公くんがつけていたのは「無差別日記」。携帯電話を媒体に、目に映るものを手当たり次第に記録する日記。未来日記もこのスタイルで書かれているため、情報量自体は抜けて多いものの、S/N比が著しく低く使い辛いものになっている。また、刑事の人が持つのは「捜査日記」。今後自分が担当する事件の関連のみに記述範囲は限られるが、その内容は細密、といった風。
 しかし惜しむらくは──設定段階でわくわくさせられた分、余計に惜しまれるのは──、これらの設定、ほぼ設定でしかないんですよね。さっぱり展開に生かされてこない。情報格差を利用した智略戦なぞは一向に始まらず。能力同士の相性なんかも特になく。挙句は学校中に地雷を仕掛け、「右に進む未来→爆死」「左に進む未来→セーフ」なんてやりだす始末です。うわあ大味ー。ここまで状況を単純化せねば未来予知を生かせんのか、という。この大味感こそBクラスのBクラスたる所以。いや、つまらなくはないよ! それなりだけど!
 
 評価:【B】