浦賀和宏『松浦純菜の静かな世界』読了

松浦純菜の静かな世界 (講談社ノベルス)

松浦純菜の静かな世界 (講談社ノベルス)

 ああ、こういう話? どういう先入観によるものか、もっとアンチェインな世界観を想像していた。具体的には最後、松浦純菜さんの右腕はシュート・マクマホンばりに宙を舞い、悪漢を打ち倒すものだと思っていた。そんな話ではなかった。誰が悪いって僕が悪い。
 しかし八木くんの鬱屈の描き方は凄かったな。およそ手加減というものがない。
 ルサンチマンには文学の香りがするもので、飾ろうと思えばそれらしく飾って書けるもので、そして我々は飾られた作品を好んで読んできたものなのだが、八木くんにはそれが一切許されていない。ただひたすらに醜い。感情移入すればするほど、きっついですわあ。
 
 評価:【B】