焚書と転売

 各所で猛烈にDISられている森博嗣の『中古品の著作権』の関連で、id:screammachine氏の『著作物は、燃やしても良いものか。』より。

 本にせよ、DVDにせよ、それが完成するまでには多くの人の手が、関わっているものだ。著作者やモデルは、確かにその作品にとって一番大切なものだし、最も権利を有するんだろう。だけど、その表紙をデザインした者、その作品を編集した者、その複製に携わった者、その作品を売るために営業した者たちもまた、その作品を大切に思い、愛し、人生の一部としているはずだ。
 それを、看板だからといって、燃やしてほしい「燃やされた方が、古本屋や図書館よりは、多少良い」と言うのは、どういうことだ。

 とのことなんですけれども、「その表紙をデザインした者、その作品を編集した者、その複製に携わった者、その作品を売るために営業した者」たちにとっても、古本屋や図書館に持っていかれることは燃やされるよりも厄介、という話なのでは(デザインした人はわかりませんが、編集した人、営業した人は出版社の人間でしょうから、本の売上から給料をもらう立場ですよね)。少なくとも森先生の主張、というか問題認識に従えばそうなるわけです。ですので、この件を以って「作家の癖くせに想像力が貧困」とDISるのは成り立たないでしょう。彼は自身以外で製作に関わった人々の利益も含めて、「古書店なりに売られるよりは燃やされた方がまだマシ」と言ってるのだと思いますよ。
 『作品に対する製作者の愛情』という筋合いで行くと、「燃やされるのも売られるのも同等程度に踏みにじられている」というのが森先生の感覚なのだと思われます(自分にとってだけでなく、編集その他で製作に関わった人々にとっても)。同等程度に良くないならば、仕事に対する報酬が減じる可能性がない分、燃やされる方がまだマシである、とそういう話です。