森博嗣『イナイ×イナイ』読了

イナイ×イナイ (講談社ノベルス)

イナイ×イナイ (講談社ノベルス)

 1. 巨大なお屋敷に 2. 美人の双子に 3. 地下室の座敷牢。あとおまけで 4. 榎木津っぽい探偵。なるほどねー、Gシリーズが現代性をとことん希求した作品群であるのに対し(『εに誓って』感想:2006/7/17)、こっちのシリーズではいわゆる“本格”的な、かび臭いミステリ・ロマンを前面に押し出そうというわけだ。と、とりあえずはそう認識した。面白いかつまらないかでいうと、まあ面白くもつまらなくもない。するするいける。裏表紙にあの人の名前を見つけたときが一番面白かったよな、というのは信者の会話なので控えよう。
 とはいえ、あれだ。現代社会において“座敷牢の狂人”を具現化しようとしたときに、一番しっくりくる説明が<ネタバレ>“そういうプレイ”である、というのは面白かった。この一点をもって、この作品が単なる懐古趣味に終わるものでないことはわかろうというもの。前面に押し出された古臭さの陰で、不意打ちの新しさがこちらの隙を窺っている。
 
 評価:【B】