ポール・アルテ『狂人の部屋』読了

 読みました。「今日び本格ミステリ書いてるのなんて日本人とアルテくらい」でお馴染み、『フランスの一人新本格*1ことポール・アルテさんの邦訳最新作です。アルテさんを読むのは『赤い霧』に続いて二作め。

「どうも気に入らないんだな」と彼はため息混じりに言った。
「家族がひとり残らず古い屋敷に集まり、金持ちで気前のいい男が……小説だったらろくな結末にならないと、相場が決まってるんだが」

 いやほんと、久しぶりに本格読んだぞー! という感じでしたね。見てくださいよこの文章! この言い回し! そして古式ゆかしいガジェットの数々!

  • かつて狂人が使っていたという『開かずの間』
  • その狂人が書いたという『死を予言する小説』
  • 『甦る死者』
  • そして『開かれる棺』
 くう! やはりこの雰囲気こそが本格なのだと僕は思います。懐かしの本格雰囲気論。やっぱり刷り込まれてるんですよねー、一時期飽きたりしてましたけども。
 おかげで大層テンションが上がり、さくさく読ませて頂きましたが、解決がまた実に良い。ウェルメイド。特に感心したのが一連の事件に共通する“ある状況”の処理の仕方で、これが<ネタバレ>それぞれの事件で別の原因によって引き起こされているという点要するに偶然なのだが、偶然によって毎回このような状況が生じてしまうということが、ラストの幻想性に説得力を与えている弱点を強みに変えるような構成になっているわけだ。
 ラストに関してはあれです、綾辻行人水車館の殺人』を思い出しました。素晴らしく美しい。これにはやはり、『本格』ではなく『新本格』なのだな、と合点がいきました。
 
 評価:【A】