『ファウストVol.2』感想

 今頃になってようやく『ファウストVol.2』を読了。東浩紀の評論以外は恐らく全部読了。第一回ファウスト賞の総評は予想通りなかなか気まずい感じであった。
 ◆『F先生のポケット』(乙一
 乙一、君は本当に良い人だね。だから、君の進むべき道はここにはない。ファウストは、君のような人の来るところではない──。
 乙一ファウスト派に組み込まれてしまうか否か、分かれ目である。出来ることなら引き返してほしいところ。
 ◆『ECCO』(滝本竜彦
 前号での佐藤友哉斎藤環との対談、今号でもやってる人生相談コーナー等で洒落にならない痛さを発揮している滝本竜彦である。「痛さ」には色々あるものの、「洒落にならない」と言うだけあって彼の痛さは楽しめない。キツい。きっと友達になれない──のだが、作品は存外に面白い。「作家」と「作品」を混ぜこぜにして論じてはならない、という好例である。かもしれない。
 ◆『コールド・スナップ』(トム・ジョーンズ舞城王太郎訳)
 だから「ドライブ感」て何だよ! いや判るけども! 舞城の文章はこの言葉でかなり誤魔化されてやしないか。それともアレか、これが音に聞く純文学って奴なのか。なら仕方ない、面白くなくても(強気すぎ)。
 ◆『黒色のポカリスエット』(佐藤友哉
 佐藤友哉は稀代のキャラ萌え作家である(注)。なにせ『新世紀エヴァンゲリオン』TV版を見た時の感想が「世の中こういうこともあるんだ。もうすぐ僕も高校生だからまじめにがんばろう」。同じく劇場版を見た時の感想が「世の中こういうこともあるんだ。もうすぐ僕も社会人だからまじめにがんばろう」。である。素晴らしいではないですか。
 さて、その萌えっぷりから友哉たんの愛称で親しまれる彼ですが、作品はいまいち。「作家」と「作品」を混ぜこぜにして以下略。『色シリーズ』が何話構成になるのか判らないし、『文学フリマ』で発表されたという『灰色のダイエットコカコーラ』を読んでないので断言は出来ないが、ここまでの展開は起→承→承、というイメージ。いつになったら「転」が始まるのか。まあ期待しつつ待とう。
(注)キャラ萌え小説を書く作家、ということではなく、作家自身が萌えキャラである、という意味。他の例としては森博嗣島田荘司(こちらはもう一段階の記号化が必要だが)などが挙げられる。
 ◆『新本格魔法少女りすか 影あるところに光あれ』(西尾維新
 前評判の割に敵役がしょぼく、若干拍子抜けなところはあるが、その程度は許容範囲内であろう。さすがは西尾、第二話にしてもの凄い安定感である。間違いなくファウスト派最強であり、ファウストの色は西尾の色であると言っても言い過ぎではない。
 彼のファンは幸せだ。一度好きになってしまえば、恐らく、二度と裏切られることのない作家であろう。
 『月姫』の奈須きのこに文章が酷似している、という弱点はあるが。