『裏返った』作品の評価法

「映画だろうが漫画だろうがゲームだろうが何でも良い。鈴藤くん、君がある作品集団に対して、例えば10点満点で採点していくとする。この方法の問題点が判るかね」
「はい。ジャンプ連載陣を例にとりましょう。まずハンターハンタースティール・ボール・ランといった、素直に面白い、素晴らしい、といえる作品。これは問題ありません。素直に高得点をつけてやれば良いことです」
「ふむ」
「次に、現在のNARUTOのように、素直につまらない、読む価値がない、クズだ、終われ、といえる作品。こちらも問題ありません。素直に低得点をつければ良いことです」
「ふむふむ」
「しかし、これらの二極では括れない作品群が存在します」
「そのココロは」
テニスの王子様BLACK CAT。これらがその代表格です。彼らはつまらない。いや、『つまらない』などといった穏便な言い方ではとても表現し切れない、突き抜けた何かを持っています。テニスの王子様の変態ぶり、BLACK CATの威風堂々とすら呼べるパクりぶり……。しかし、だからこそ彼らには読む価値が生じている、と言えないでしょうか。先日、僕は通学中に『BLACK CATはどうしたら面白くなるか』というテーマで脳内討議を開催している自分に気付きました……。ここまで来れば、僕はあの作品を楽しめている、のではありませんか?」
「そう、正にその通り。彼らは駄目であれば駄目であるほど、逆にその駄目さで我々を楽しませてくれるという、歪んだ構造を持っている。バロックだ。この現象を、テクニカルタームで『毒が裏返った((C)烈海王)』と呼ぶ」
「小説で例を挙げれば『コズミック』(清涼院流水)ですね。確かにあの余りにもあんまりなオチは、読者に笑いながら本を壁に叩きつけるという奇怪行動をとらせますが、だからと言って0点と断じてしまうのはどうか──それでは真につまらない、『月光ゲーム』(有栖川有栖)のような作品と区別がつかなくなる、そういうことですね」
「そこで私は提案する。『裏返った』作品群を評価するためには、全く別の評価軸に隔離してやるべきではないか」
「えー、こういうことですか。『週刊少年ジャンプ・一般』と『週刊少年ジャンプ・裏』にカテゴリを分け、それぞれ独立した評価法で点数をつける。前者ではどれだけ素直に楽しめるか、が評価基準になりますが、後者では友人と酒を呑みながらどれだけ突っ込めるか、が基準になる。BLACK CATは前者では2点ですが、後者に入れると9点を叩き出す、とか」
「そうそう、そんな感じ。NARUTOは前者で4点、後者にしても精々3点だろう。両方の観点で、取り柄がない」
「後者の基準が曖昧なのが問題になりそうですね」
「難しいね。今後とも考えなければならないテーマだろう」
 
「ところで。流しといたけど、さらっと危険発言をかますのはやめたまえ。有栖川有栖ファンを敵に回すとロクなことがない」
「まあ、僕たちの会話はフィクションですから。現実の人物・団体・事件などとは関係ありませんですよー」
「と見せかけて、君は本当は実在する人物だったのだー! というミステリはどうか」
「どうかと言われましても」