王太郎が来る!

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

 舞城王太郎『暗闇の中で子供』読了。
 以前『煙か土か食い物』及び『世界は密室でできている。』を読んだときには「どうも舞城は文章が受けつけねえなー」とか知った風な口を叩いていた私ですが、そのとき蒔かれた舞城文体の種は水もやらずに根を伸ばし、ついには受け入れられる土壌を生成するに至ったようです(僕の心象風景の中に)。もう文章の一つ一つが楽しくて仕方ありませぬ。開眼しました。
 確かにね、ストーリー意味わかんないよ? あの暗闇の中の子供とか、おかっぱの幽霊とか、二郎ちゃんの顛末とか。それどころじゃなく、さっき殺された登場人物がまた別の場所・別の方法・別の犯人に殺されてたりというあからさまな破綻も。
 そんな訳の判らない、場合によっては矛盾している話を、語り手である三郎ちゃんはばっさりと切って捨てます。
 「物語は嘘でしか語れねえ」
 ──素晴らしいじゃないか。
 その三郎ちゃんのキャラがまた良い。これは駄目人間萌えだろうか? 「俺は奈津川三郎、四郎の兄貴で二郎の弟で一郎の弟!」ってお前はロトの子孫であることしか拠り所のない主人公か! 最後はみんなでミナデインか! 全く可愛い奴じゃぜい。
 いやはや甘く見てたよ舞城さん。最近は着々と純文学ロードを歩んでるっていう悲しい噂を聞いたけど、貴方にかかれば純文だろうときっと楽しくなるって信じてる。
 「三郎三郎ふふっふ三郎デュビデュバ。イエー。」