麻耶雄嵩『螢』感想
- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2004/08
- メディア: 単行本
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「過去最高の仕事。なんかまわりくどい言い方だな。最高傑作、では駄目なのかい」
「うーん、駄目ってことはないが。でもなんか、違うんだよなあ。俺の中では――うわ恥ずかしい、『俺の中では』だって。まあともかく、傑作という言葉の持つイメージとは違う。有体に言うと、この作品、話自体はそこまで面白くないんだよ。せっかく『嵐の山荘』という舞台なのに、閉塞感とか、サスペンスとか、そういったものはほとんどない。オチはちょっと利いてるけどね。淡白なんだ。『どきどきした』『感動した』という感じではないんだね。それよりも、精緻な工芸作品を観たときに抱く感慨というかね、ほう、と鳩尾の下から感嘆の溜息が溢れてくるというかね、そういう作品なんだよなあ。それには傑作というよりも、最高の仕事、という言葉の方が似合う。そう思う」
「なるほど。でその、肝心の逆叙述トリックについてなんだけど」
「おっとそれ以上はネタバレだ。ここから先は言えないな。そこは是非とも君自身の眼で確かめて欲しい」
「そんなVジャンプブックスな」
評価:【A】【心】