いま、そこにある魔術。

レキオス

レキオス

 池上永一『レキオス』を読了。
 以前、沖縄出身の後輩くんが「うちの地元を舞台にした『ブラックロッド*1がありますよ!」と紹介していた本なのだが、読んでびっくり、本当にその通りでやんの。
 ただ、ブラックロッドシリーズが完全に一から世界を創り上げて、その中でトンデモ魔術バトルを繰り広げているのに対し、レキオスでは沖縄、駐留米軍、CIA、テロ組織といった現実世界を基に話を組み立てているのが面白い。やってることは同じくトンデモ魔術バトルなのだが、それと現実世界がもの凄いシームレスに繋がっているのだ。みんな一応現代社会の住人なはずなのに、魔術やら呪術やらを見ても大して驚かない。なんなんだ、沖縄では魔術はわりと日常なのか? とか疑問を差し挟む暇もなく、いつの間にか魔術戦が始まっている。始まっちゃってるんだから仕方ない……というように、やたらと設定を説明したりせず、ただそこにあるものとして魔術・呪術を扱っているのが巧い。なるほど、こういう書き方もあったか……。感心一つ。
 しかしハッタリ力に関しては古橋秀之の方が二枚も三枚も上手、といったところ。レキオスでも、起きている状況はなかなかとんでもないのだが、それを言葉にして出力する際にまだまだ思い切りが足りないんではないかな。
 評価:【C+】【心】

*1:ブラックロッド』『ブラッドジャケット』『ブライトライツホーリーランド』の三部作。古橋秀之著。読み返して感想文を書きたいのだが、友人に貸しっ放しで現在手許にないのであった。