欲望はいらない、ただ眠らない身体が欲しい

 ちょっと気を抜くと二週間も停滞する。恐ろしい恐ろしい。
 先日、名前を聞けば誰もが知ってる某大手出版社の説明会に行ってきました。週刊誌に配属された場合、とりあえず水曜の朝から木曜深夜までの三十六時間労働はデフォルトらしいです。他の日は夜十時くらいには帰れるので楽、だそうです。土日も結構取材とかだそうです。
「で、でも僕は書籍の編集とかマーケティングとかが希望なので関係ないかにゃ〜」
「ああ、ウチは職種別採用しないから。希望も聞くけど、新人はまず週刊誌に配属されるのが普通かなー。こんな仕事若いうちしかできないからねえ(にこにこ)」
 最近、とみに眠らない身体が欲しいと思うようになった。それが無理ならばせめて少ししか眠らなくても大丈夫な身体。遊べる時間は少ない。でも毎日平均して一時間睡眠を削れば、残り人生を五十年とした場合、50×365×1=18250時間もの余裕ができる。二十一世紀になってもう何年も経つんだから、いい加減誰かが時間銀行を設立しても良い頃合じゃないかな。ライブドアの新事業ってのがそれなんじゃないかと僕は睨んでいるのだけれど……。疲れたときには貯め込んだ時間預金をおろして怠惰に過ごすんだ。ああでも最近の時間泥棒はスキミングとかやってくるだろうから、まずはセキュリティを考えないと――。
「気づいていないようだけどね、鈴藤くん」
 あ、先輩だ。
「就職すればね、そもそも意志で削れるような駄睡眠時間、まずはそれからなくなるんだよ」
 何を考えて逃避しても最後は就職の二文字に集約される、それがゴールドエクスペリエンス・レクイエム。終わりのないのが終わり。僕たちは生きているうちから鎮魂歌を聞く。