寂寥感奇人 / 『ICO』感想

「もしも僕がICOだったなら、霧の城から出ようとせず、最初に入ってた樽みたいなのからすら出ようとせず、せこせこと何かの文章を書きつづけ、それで一生を終えるだろう。自分の姿をギリシャディオゲネスにでも重ねてみて、くすくす悦に入るだろう。そんな僕に愛想を尽かし、白い女の子は城を去る。それでも僕は樽から出ない」
「なるほど、つまりあの五十三人の黒い影は、そういう気持ち悪い連中なんだな」
 そんなわけで各地で大絶賛、果ては宮部みゆきが小説まで書いちゃってあーあーな『ICO』(公式サイト)をプレイ。僕の野郎のことだからどうせ気に入るんだろうなと思っていたら案の定気に入りました。走り回ってるだけでしみじみする寂寥空間に言葉の通じぬ女の子。ああそうか、この設定&雰囲気、キリンジの『エイリアンズ』ではないですか。まるで僕らはエイリアンズ。この星のこの僻地で魔法をかけてみせるさですよ。うむ美しい。
 クリア後、余韻に浸りつつネットの海をばしゃばしゃやってて開発チーム上田氏・海藤氏の講演の模様を発見する。上田氏によると、ICOの当初のコンセプトは「エロティックなものをいかにオブラートに包んで表現するか」だったという。それを受けた形のダルヨ 〜icoやりこみ〜内の考察。霧の城と女性器の構造を比較していらっしゃいます。こじつけ万歳、素晴らしい。五十三人滅多切りが精子間の争いだとか、ラストシーンの実体ヨルダは娘さんであるとか(何せ海は誕生の象徴)はなかなか説得力。

ICO PlayStation 2 the Best

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