だからって別にウソとかつかないよ
- 作者: 森博嗣,山田章博
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/04/28
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 75回
- この商品を含むブログ (125件) を見る
さ、それはそれとして、毎度お馴染み読書感想文。ここのところ珍しく読書づいてるので、アウトプットが追いつかないのです。
森博嗣『探偵伯爵と僕』
『かつて子どもだったあなたと少年少女のための"ミステリーランド"』シリーズ、森博嗣のターン。小学生の『僕』は夏のある日、伯爵と名乗る謎の人物と知り合う。伯爵は探偵であり、ある事件を追っているらしい。そして起こる小学生の失踪事件。消えた同級生を捜すため、『僕』は伯爵と共に調査を始めるが……とまあそんなお話。
途中まで、いや終盤まで、取り立てて面白いものでもない、と感じていました。普通に同級生が殺されてたり、子供向けにしては少しキツめなところはあるけれど、それでも一般的なジュブナイル作品の枠を特に逸脱するものではないな、くらいに思っていたのです。――が、最後の最後、探偵伯爵からの手紙によって、物語の姿は急変。キツすぎです。ネタバレにならない程度に具体的に言うと、そこで初めて犯人の動機がわかるんですが、これがもう。このキツさ、良いか悪いかと言われたら判断に困りますが、その志は認めたい。また、叙述トリックが使われているのですが、それが使用される理由が物語世界的に必然である、という点も高く評価してしかるべきでしょう。そこに至った『僕』の心情を想像すると……うん、震えがくるぞ。森博嗣のお家芸である「動機などない」を逆手に取っているのも偉い。これは作家論の人とかが見たらなかなか興味深いのではないでしょうか。
そんなわけで大変面白かったのですが、ただ、こんなん子どもに読ませてどうするんだ感は殊能先生の『子どもの王様』をも超越しています。すげーぜ。偉大なミステリーランド、自らの重いトラウマを背負って立つトラウマ生産機ミステリーランド。
評価:【A】【心】