萌えない俺が悪いのか
クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)
- 作者: 西尾維新,take
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/02/07
- メディア: 新書
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これがもうびっくりするほどつまらなくてびっくりする。とにかく文章が辛くて辛くて集中できない。青臭い精神性が嫌だというのではなく(むしろ青臭いのは大好きだ)、随所に散りばめられた『気の利いた言い回し』にいちいち気が利いていないせいであろう。意味なしの戯言が売りな作品だけに、これは相当マイナスポイント。そうかそうか、飛ぶ鳥を落とす勢いの西尾先生にも垢抜けない時代があったのか……と逆に安心してしまうほどの下手さである。
物語も平板で、せっかく孤島で首斬り殺人なのにどうも盛り上がらない。登場人物全員がある種いつ死んでも構わない畑の住人であるため(もし人並み程度に命が惜しければ、女主人のあんな提案、それこそ戯言には耳を貸さずに警察を呼ぶだろう?)、緊張感も何もないのであった。これは少し新しい気がするけど、新しければ何でも美味しく頂けるというわけではない。
キャラ萌え小説として見てもいまいち。五人の天才科学者だの、美少女三つ子メイドだの、キャラクターの外面は過剰に装飾しているにも関わらず、それらが「ただいるだけ」になってしまっているのは残念だ。もっとさあ、こう、情動を誘起するような演出はないのかね。これで萌えられるってんなら白紙に『ツンデレ』って書くだけでも萌えますよ。
ただ、タイトルはなかなか美しい。誉めポイント。クビキリとリサイクルの駄洒落だが、もうひとつ、サイクルに関するネタ(殺人事件の周期に関する議論とか。せっかく過去の事件とかほのめかしてるんだし)があるともっと楽しかったかも。
評価:【C】
言い忘れてた。一箇所、ミステリとして非常にアンフェア度の高い記述がある――のだが、気づくと同時にそれをアンフェアでなくする屁理屈も思いついてしまう。まったく、一人称叙述というやつは業が深い。