況や冥界などない

くるぐる使い (角川文庫)

くるぐる使い (角川文庫)

 大槻ケンヂ『くるぐる使い』読了。
 短編集です。特に気に入ったのは表題作と『憑かれたな』の二つ。
 ◆『くるぐる使い』
 コックリさんを使ってトラウマッ娘を狂わせる、というアイディアが大変素敵なお話。くるぐる使い、というハッタリ設定を導入することでビジネスライクに人を狂わせる動機が生まれています。巧いなあ。
 80年代にはコックリさんが元で起きた集団ヒステリーだとか精神障害だとかといった例が医学的にも報告されているようで(参考リンク)、僕らよりも一世代上の方々にとってはもっと身近なロマンだったのではないでしょうか。
 ◆『憑かれたな』
 この世に悪霊など存在しない、全て憑依現象とは妄想の産物である――そう主張する元俳優・滝田一郎が、エクソシストの演技によって暗示をかけ、『除霊』する、というお話。……ってこれ、憑物落としじゃん!
 調べてみたところ、本作の初出はSFマガジンで93年6月。一方『姑獲鳥の夏』の初出はご存知講談社ノベルスで94年9月である。
 そうか、京極、お前もか……。
 また一歩大槻ケンヂが神に近づいてしまってとても困る。聖なるかな聖なるかな聖なるかなオーケン、昔いまし、今いまし、後きたりたもう主たる全能の神。
 
 評価:【B】