フェノメノン・クラッシュ!

どきどきフェノメノン

どきどきフェノメノン

 森博嗣どきどきフェノメノン』読了。
 ちょいと症状を軽くした『アメリ』みたいな話でした。もちろん心の病のですよ。
 全体的に行き当たりばったりというか、小手先で書いてやがんなーという感じは否めませんが、森博嗣の作品など八割小手先ですので、別に今さらどうこう言うことではありません。小手先でも面白い、それが森先生の恐ろしさ。まあ、たまには本気だして欲しいけど(『女王の百年密室』は本気だったと思う。『迷宮百年の睡魔』は小手先だったと思う)。
 一つ注目ポイントを挙げるなら、水谷浩樹という男、彼の描き方は大変素晴らしいですね。読み終わった今でさえ、気持ち悪いんだか可愛いんだかさっぱり判断がつきません。だったら可愛いってことにしちゃえば良いじゃん、そうすりゃお互い幸せさ、とまあそういう非常に前向きな話と言えましょう。ジャン=ピエール・ジュネよりは森博嗣のほうが、登場患者たちに対する視線は優しい気がします。
 
 評価:【B+】