ミロク・クロミ・ミクロ
- 作者: 我孫子武丸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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やー、面白かった面白かった。なんなんだろうね、この巧さは。視点人物、特に刑事のほうなんて絶対感情移入できないタイプなのに、まったく苦痛なく読める。ここらへんに地力の高さを感じるなあ。歌野晶午ならこうはいかないもの。コンパクトにまとまってるのもマル。もっと伏線増やして長くする余地はあるのに、しない。そういうのがメインの話じゃないからね。短さも立派な武器の一つなのだから、これからも変に格好つけて大作めかしたりしないほうが宜しい(と思う)。
書き下ろしの長編はなんと『殺戮にいたる病』以来、実に13年ぶりだそうだ。満を持して(あるいはようやくかまいたちフィーだけでは食えなくなって)放った一矢は、ミステリ作家なら誰でも一度は書いてみたいであろう新興宗教もの。さすがに食傷気味だよなあ、などと思いきや、なかなかどうして新しい食感です。オチには噴飯、同時に感心。この人の描く真相はいつも、『驚く』だけでなく『気が利いている』んですよね。その点、まったく錆びついていません。僕らの我孫子は生きていた。素晴らしい。
誉めポイントばっかりになっちゃいますけど、既存の我孫子作品のどれとも似ていないこと、これもまた偉いですね。一度書いたものは書かない、という矜持は健在です(まあ、そのせいで書けば書くほど自縄自縛に陥って、結果13年開いたわけで、良し悪しであるが)。次はやりそうでやってなかった学園ものとか良いんじゃないかな――ってそうだ、ミステリーランド控えてるんじゃん。楽しみだぜー。
評価:【A】