『全知全能の占い師、ただし出身嘘つき村』みたいなっ! / 『霊視』感想
- 作者: 藤原京,小野双葉
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1997/02
- メディア: 文庫
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僕が先入観に捕らわれていたせいなのか、それとも藤原京の技量のなせる技なのか。まるで予想しなかった方向へ話が進み、大層驚いた。驚きポイントを説明すれば当然この意外性はスポイルされてしまうため、あえてわかりにくい例を使うことを許して欲しいのだが、殊能将之がポール・アルテ『赤い霧』を読んだ際の感想というのがこんな風だったのではないだろうか。わかりにくいっていうか知らないねそんなこと。ごめん、やっぱり許してくれなんて言わない。
ここに来て主人公・長尾くんが大変魅力的に思えてきて参った。持ち悪魔はヴォラク、《透視系》。『嫌らしく隠されたものを嫌らしく見つけだす』能力。黒沼は仕事上長尾くんの眼が必要で、長尾くんはただ何か(それが何かっつったら何かだ)を見たいがために黒沼を手伝ってきた。――しかし、ヴォラクによって何でも見通す眼を与えられても、見えたものを解釈するのはやはり長尾くんなのだった。何が見えても、長尾くんには真実などわからない。
今回、長尾くんは真実を知る者に出逢う。そして真実を知るとはどういうことなのか訊こうとする。しかし、そいつは嘘しか言わない。長尾くんには何もわからないのだ。
こんなところでシリーズが終わってしまうというのはびっくりだが、らしいと言えばらしいと言える。結局、登場人物の背景、悪魔を呼び出した動機だとか仕事に対する感情だとかの面はついに描かれることがなかった。長尾くんの目に見えるものしか描かれない。シブいぜ。堪能しました。
評価:【B+】