倉阪鬼一郎『大鬼神――平成陰陽師 国防指令』読了。

大鬼神―平成陰陽師国防指令 (ノン・ノベル)

大鬼神―平成陰陽師国防指令 (ノン・ノベル)

 善き倉阪鬼一郎読みであれば、神亀村出身の大関『大神亀(だいしんき)』が登場した時点、つまり超序盤で、一分の狂いなく結末を予測できることでしょう。作品のタイトルは『大鬼神(だいきしん)』です。大関の名前は『大神亀(だいしんき)』です。「大神亀が鬼の形相に」とか「大神亀が鬼神のごとき活躍を」とかいった文章でいちいち笑えることでしょう。くり返しますが、作品のタイトルは『大鬼神(だいきしん)』です。大関の名前は『大神亀(だいしんき)』です。
 あとサイドストーリーとして、僻村である神亀村村民の田舎描写に穏やかな悪意があって楽しいです。スーパーカミオカンデに対抗して造られた村おこしの切り札『シンキンデスペシャル』、通称『シンスペ』。とりあえず作ってみたニュートリノせんべい。着メロはみんな『大神亀音頭』。
 つまりこの作品、倉阪先生の三大要素であるところの『駄洒落』『世界崩壊』『田舎者ヘイト』を全て、バランスよく楽しめる佳作であると言えます。倉阪先生の入門にお薦め。ただ、ダイオキシンが絡まなかったことだけは悔やまれるところですが。
 
 評価:【C+】(お薦めでこれかい)