倉阪鬼一郎『十三の黒い椅子』読了。

十三の黒い椅子 (Mephisto Club)

十三の黒い椅子 (Mephisto Club)

 メタメタ系仕掛け本。先にあとがき読もうとしてうっかり捲ると後悔します。きちんと頭から読んで、趣向を理解してください(余計な世話である)。
 鬼一郎先生の御作にしては、奇想に(比較的)整合性がある――なんて思ったら、なるほど、メフィストで連載してたんですね。ミステリ色が濃い感じです。まあ、あんなものを伏線と言われてもこちらとしては困るんですが、僕が困ったところでカケラも鬼一郎先生は困りますまい。
 面白かったのは終盤、物語がメタにメタに退行していく過程で、手に持って読んでいるこの『十三の黒い椅子』という本自体、これがなにやら不吉なものに思えてくるところですね。毒が塗ってあるような気がしてくる(c:佐々木倫子)んですよ。退行する物語空間と現実が、物体としての本を媒介にして体感的に繋がる心地。良いものを読みました。
 
 評価:【B】【心】