米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』読了

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

 諦念と儀礼的無関心を自分の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を。

 高校生の男女二人をメインに据えた日常の謎系短編集。なんとも“西尾維新以降”といったものを強く感じた。本当は頭が良くて探偵気質なんだけど故あってそれを封印し“小市民”としての生き方を模索する主人公ズ。しゃらくせえーッ ゲロ以下のにおいがプンプンするぜーーーッと思ったけれど、それは私が、既に青春小説というジャンルにおいてはロートルだからなのかも知れぬ。こういった、あえて牙を抜いて僕たちは生きるぜ感というものにシンパシーを覚える文化が存在するのだ。私にとっての青春小説といえば、法月綸太郎『密閉教室』だとか、大槻ケンヂ新興宗教オモイデ教』だとかで、共通するものは大体血反吐。血反吐を吐きながら書いたような文章。なんだけど、別に血反吐を吐くばかりが青春ということもなかろうよ。はいまったくその通りで。
 『密閉教室』といえば、あの作品が世に出た当時、「こんな高校生はいない」などという批判があったと聞く。しょうもないことを、と思ったものだが、うっかりすると自分もいつか言いかねんな、という恐怖がある。ここ最近では一番の恐怖だ。
 
 評価:【B】

密閉教室 (講談社文庫)

密閉教室 (講談社文庫)

新興宗教オモイデ教

新興宗教オモイデ教