三津田信三『首無の如き祟るもの』読了

 本読みという生き方を続けているとたまにこう、「表紙見ただけで傑作と確信」という瞬間が訪れることがあります。所詮は根拠レスな思い込みであり、その的中率は決して高くはないのですけど、今回はこれが見事に当たってくれました。こいつは大変面白い。最近気合の入ったミステリ読んでないなーなんて方は是非に、って奴ですね。

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

  • 「古い因習と独自の信仰に縛られた山奥の旧家」などといった横溝正史的舞台装置
  • 語り口のメタ構造
  • 首斬り殺人
 これらの要素すべてにきっちりミステリ的必然性がある、という丁寧なつくりに僕の中の必然性厨はご機嫌です。「設定全てが罠だぜ」と脳内キルアが囁きました。
 終盤、探偵役がこの事件にまつわる数々の疑問点を「二十一の謎」として箇条書きにし、さらにこれらの謎は全て「一つの隠された事実」によって説明できる──、なんて言い出すくだりはもう。この瞬間のためにミステリ読んでるんだ! て感じでしたね。そしてこの「一つの隠された事実」の開示、この一発だけで十分ノックダウンに足りるんですが、しかし本作、ここから怒涛のコンボの始まりです。倒れる暇も与えぬどんでん返しの無呼吸連打。三津田先生、殴る殴る。これぞ故事に言う「止めて! 読者のライフはもうゼロよ!」という奴でありましょう。素晴らしい「ずっとオレのターン」ぶりでありました。
 評価:【A】
 
 ちなみに本作、シリーズものの三作めですが、前の二作は無理に読む必要もないかなーと思います。この刀城言耶って人がシリーズ共通の探偵役なんだよ、ということがわかれば十分ですし。それにその、あんまり、面白くないですし……。