詭道も道なり / 古橋秀之のエッセイを読んだ

 集英社スーパーダッシュ文庫のサイトで作家のリレーエッセイを連載しているのだが、我らが古橋先生の回が熱い。

「自分は新しいことを考えないで、相手にはびっくりしてもらう」ためにメタなパターン崩しだの安易なキャラ殺しだのをやってたのだとしたら、それは君の心掛けが悪い。ファックファック言ってないでよく考えるのだ、少年よ。

 実に力強く、汎用性の高いお言葉である。例えば新本格ムーブメントの衰退なんかにも適用できるんではないかな。権威や王道をブン殴って名を上げてきたようなわかものが、ついに玉座を勝ち取りました、って段階に至って「じゃあアンタ王様ってことでいいからこれからは王様らしい仕事をしてくれ」と言われて途端に筆を止めてしまうというような。面白い王道を書くことは、トリックプレイで後ろから殴るのの十倍難しい。王道を通らず王になってしまったわかものは、王になって初めてそのことに気づくのであった。という。
 とはいえ。
 とはいえ、この境地に至って書かれたのが『冬の巨人』、という理解をしてみると、この方向はこの方向であんまりわくわくしないような予感もしてるんだよなあ(やや関連:http://d.hatena.ne.jp/rindoh-r/20070805/p1)。ちょいとメタに立ったくらいで勝った気になる精神性は小四の教室に画鋲留めして置いてこい、というメッセージは謹んで承るが、その上でやはり王道に乗らないという選択もあるだろう。詭道も道なり。そこらへんを当面の目標にしていこう。

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)